- 初版:2018年12月
- 第二版:2019年12月
はじめに
本エントリーはMicrosoft Azure Stack Advent Calendar 2018の22日目です。
昨日に続いて本日のエントリでも Azure Stack Hub のバックアップをまとめます。本日のエントリの主題は、利用者が取得すべきバックアップです。なお、PaaS のバックアップは本エントリの対象外です。私が PaaS のバックアップを説明できるほど PaaS を使いこなしていないからです。
Azure と違うこと
Azure の場合、多くの利用者は Virtual Machine のデータをバックアップするために Azure IaaS VM Backup を利用していると思います。Azure IaaS VM Backup は、定期的に Virtual Machine の Disk のスナップショットを取得して世代管理してくれる素晴らしいサービスです。
残念なことに、2108 Update 時点の Azure Stack Hub には Recovery Service Vault がありません。そのため、Azure Stack Hub では Azure IaaS VM Backup が利用できません。Azure IaaS VM Backup が存在しない状況は、Azure Stack Hub と Azure との一貫性を大きく損なっています。早く実装されてほしいです・・
データのバックアップ
Azure IaaS VM Backup が存在しない Azure Stack Hub で Virtual Machine のデータをバックアップするためには、エージェント型バックアップを利用する必要があります。例えば Acronis や Arcserve、Comvault などのサードパーティソリューションを使うもよし、Azure Backup Server や Azure Backup Agent などの Microsoft ソリューションを使うもよし、使い慣れたものを利用するとよいでしょう。
バックアップデータの保存先には注意が必要です。バックアップデータを Azure Stack Hub 上に保存してしまうと、Azure Stack Hub が全損した際にバックアップデータも消失します。エージェント型バックアップを構築する際は、バックアップデータが Azure Stack Hub の外に保存されるようなアーキテクチャにするとよいでしょう。
構成情報のバックアップ
昨日のエントリで説明したとおり、Azure Stack Hub の管理者が取得するバックアップには、利用者が作成したリソースの構成情報が含まれていません。リソースの構成情報をバックアップは、利用者の責任範囲に含まれます。
「万が一に備えて構成情報を控えておきたい。リソースの再作成は手で構わない」というスタンスであれば、Azure のリソース定義を JSON で取得したい の方式で一括取得する方法が気軽です。「再デプロイ可能な状態で構成情報を保存したい」というスタンスであれば、Infrastructure as code なツールを利用して構成をコード化しておくとよいでしょう。
BC/DR
本日の主題から離れてしまいますが、バックアップと関連のあるBC/DR についても触れます。
Azure の場合、BC/DR を考慮すると複数リージョンを利用してシステムを構成するのが一般的です。残念ながらことに、2108 update 時点の Azure Stack Hub にはマルチリージョンやペアリージョンの機能が実装されていません。そのため、OS 以上の機能で Azure Stack Hub 上のデータを別の場所に複製する必要があります。
Azure Stack と Azure
複製先の候補の1つが Azure です。Azure への複製機能を有する Azure Site Recovery は Azure Stack Hub をサポートしています。ただし、サポートされている方式は、構成サーバを利用した実装です。Azure の Azure to Azure のような実装ではありません。Azure Stack Hub が Recovery Service Vault をサポートしていない以上、Azure to Azure と同じ実装ができるわけがありません。Recovery Service Vault のリリースが待ち遠しいです。
Azure Stack と Azure Stack
マルチリージョン と Recovery Service Vault が存在しない 2108 update 時点の Azure Stack Hub には、Azure Stack Hub 同士でデータを複製する機能がありません。
ただし、データを複製できないわけではありません。Azure Stack Hub に機能がないなら、バックアップと同様、OS 以上の仕組みでデータを複製すればいいわけです。Ignite 2018 では、BC/DR 担当の Hector 氏によって、現時点の Azure Stack Hub における BC/DR の実装に関するセッションが行われました。このセッションの後半で Azure Stack Hub 同士でデータを複製する際のアーキテクチャが取り上げられています。これが 2108 update における現状です。正直しんどい。マルチリージョンのサポートを皮切りに、BC/DR の部分についても Azure との一貫性が保たれることを願います。
まとめ
本日のエントリでは、利用者向けのバックアップをまとめました。利用者向けパックアップの部分は、重要にも関わらず Azure と一貫性がありません。残念です。従来のエージェント型バックアップを利用しましょう。