Azure OpenAI Service を Private Endpoint 経由で利用する

azure
Published: 2023-04-19

はじめに

Azure OpenAI Service は Private Endpoint をサポートしています。ですので、Azure OpenAI Service の特定のドメイン宛ての通信をインターネット経由ではなく閉域網経由にできます。また、ファイアウオールの機能もあるので、インターネットからAzure OpenAI Service の特定のドメイン宛ての通信を拒否することもできます。

プライベート エンドポイントを使用する

ドキュメントを読んでも構成がピンと来なかったので、実際にやってみました。

環境

今回の構成

オンプレミスと Azure の仮想ネットワークは S2S VPN で接続されています。その仮想ネットワーク上に Azure OpenAI Service 向けの Private Endpoint を用意しました。Azure OpenAI Service 側のファイアウオールでは、インターネットからの通信を拒否するように設定しました。なお、仮想ネットワークは東日本に、Azure OpenAI Service は East US に用意しました。

設定

Azure OpenAI Service を作成すると、<リソース名>.openai.azure.com という専用の FQDN が用意されます。

{
    "id": "/subscriptions/<サブスクリプション ID>/resourceGroups/<リソースグループ名>/providers/Microsoft.CognitiveServices/accounts/<リソース名>",
    "name": "<リソース名>",
    "type": "Microsoft.CognitiveServices/accounts",
    "etag": "\"de004200-0000-0100-0000-643f438b0000\"",
    "location": "eastus",
    "sku": {
        "name": "S0"
    },
    "kind": "OpenAI",
    "tags": {},
    "properties": {
        "endpoint": "https://<リソース名>.openai.azure.com/"
    }
}

そして、このアカウントに対して作成した Private Endpoint には、<リソース名>.privatelink.openai.azure.com のドメインのみが登録されます。

{
  "value": [
    {
      "name": "default",
      "id": "/subscriptions/<サブスクリプション ID>/resourceGroups/<リソースグループ名>/providers/Microsoft.Network/privateEndpoints/openai-pe/privateDnsZoneGroups/default",
      "type": "Microsoft.Network/privateEndpoints/privateDnsZoneGroups",
      "properties": {
        "privateDnsZoneConfigs": [
          {
            "name": "privatelink-openai-azure-com",
            "id": "/subscriptions/<サブスクリプション ID>/resourceGroups/<リソースグループ名>/providers/Microsoft.Network/privateEndpoints/openai-pe/privateDnsZoneGroups/default/privateDnsZoneConfigs/privatelink-openai-azure-com",
            "type": "Microsoft.Network/privateEndpoints/privateDnsZoneGroups/privateDnsZoneConfigs",
            "properties": {
              "privateDnsZoneId": "/subscriptions/<サブスクリプション ID>/resourceGroups/<リソースグループ名>/providers/Microsoft.Network/privateDnsZones/privatelink.openai.azure.com",
              "recordSets": [
                {
                  "recordType": "A",
                  "recordSetName": "<リソース名>",
                  "fqdn": "<リソース名>.privatelink.openai.azure.com",
                  "ttl": 10,
                  "ipAddresses": [
                    "10.1.10.4"
                  ]
                }
              ]
            }
          }
        ]
      }
    }
  ]
}

この Private Endpoint を利用するためには、クライアントからの <リソース名>.openai.azure.com の名前解決要求に対して、クライアントが参照する DNS キャッシュサーバが Private Endpoint の 10.1.10.4 を返す必要があります。

今回の構成では、クライアントが参照しているドメインコントローラに <リソース名>.openai.azure.com のゾーンファイルを作る方式で対応しました。

PS > Get-DnsServerResourceRecord -ComputerName dc01 -ZoneName <リソース名>.openai.azure.com

HostName                  RecordType Type       Timestamp            TimeToLive      RecordData
--------                  ---------- ----       ---------            ----------      ----------
@                         A          1          0                    01:00:00        10.1.10.4

実際に、クライアントで <リソース名>.openai.azure.com を名前解決すると、Private Endpoint のプライベート IP アドレスが返ってきます。

PS > nslookup <リソース名>.openai.azure.com
Server:  UnKnown
Address:  192.168.111.248

Name:    <リソース名>.openai.azure.com
Address:  10.1.10.4

動作

上記の設定の通り、Azure OpenAI Service を利用するために必要な通信の中で、<リソース名>.openai.azure.com への通信のみが Private Endpoint 経由になります。Azure OpenAI Service の API キーが手元にあり、Azure OpenAI Service の全ての操作を Azure OpenAI Service の API 経由で実施するのであれば、全ての通信を Private Endpoint 経由にできます。

一方で、Azure OpenAI Service を GUI から利用できる Azure OpenAI Studio の FQDN は oai.azure.com ですので、Azure OpenAI Service の Private Endpoint 経由にはなりません。また、Azure OpenAI Studio を利用するために必要な Azure AD 認証の通信も Private Endpoint 経由にはなりません。

構築した構成で動作を確認します。今回の検証では Azure OpenAI Service のファイアウオールでインターネットからのアクセスを拒否しているので Azure OpenAI Studio を利用できません。PowerShell を利用して Private Endpoint 経由で Azure OpenAI Service の API を直叩きする形でモデルをデプロイして AI に質問してみます。

$apiKey = "API KEY"

$header = @{
    "content-type" = "application/json"
    "api-key" = $apiKey
}

$body = @{
    "model" = "gpt-35-turbo"
    "scale_settings" = @{
        "scale_type"=  "standard"
    }
} | convertto-json -depth 10

$res = Invoke-RestMethod -Method POST -Uri "https://<リソース名>.openai.azure.com/openai/deployments?api-version=2023-03-15-preview" -Body $body -header $header 
$res

scale_settings : @{scale_type=standard}
model          : gpt-35-turbo
owner          : organization-owner
id             : deployment-25c4dc853b6044dd976e797d9e67d714
status         : succeeded
created_at     : 1681897083
updated_at     : 1681897083
object         : deployment
$body = @"
{
  "messages": [
    {
      "role": "system",
      "content": "Your are the professional of coffee and you know the price of cofee around the world"
    },
    {
      "role": "user",
      "content": "How much is Tokyo's coffee?"
    }
  ],
  "temperature": 0.7,
  "top_p": 0.95,
  "frequency_penalty": 0,
  "presence_penalty": 0,
  "max_tokens": 800,
  "stop": null
}
"@


$res = Invoke-RestMethod -Method POST -Uri "https://<リソース名>openai.openai.azure.com/openai/deployments/deployment-25c4dc853b6044dd976e797d9e67d714/chat/completions?api-version=2023-03-15-preview" -Body $body -header $header 

$res.choices[0].message.content

上記の通り、東京のコーヒーの値段を聞いてみました。AI の回答は次の通りです。無事に答えてくれました。Private Endpoint 経由で AI とお話できてそうです。

The price of coffee in Tokyo can vary depending on the type of coffee and the location of the café. On average, a cup of coffee in Tokyo can cost anywhere between 400 to 800 Japanese yen (approximately $4 to $8 USD). However, there are also specialty coffee shops that offer higher quality coffee for a higher price. It is also worth noting that some coffee shops in Tokyo have a seating charge, which can add to the overall cost of your coffee.

注意点

Azure OpenAI Service の一部の操作は、次の Azure Resource Manager のエンドポイント経由でも実行できます。

https://management.azure.com/subscriptions/<サブスクリプション ID>/resourceGroups/<リソースグループ名>/providers/Microsoft.CognitiveServices/accounts/<リソース名>/deployments

https://management.azure.com/subscriptions/<サブスクリプション ID>/resourceGroups/<リソースグループ名>/providers/Microsoft.CognitiveServices/accounts/<リソース名>/models

API の定義を見る限りでは、デプロイに関する Read/Write 操作とモデルに対する Read 操作を実行できそうです。

cognitiveservices.json

私が検証した際には、Azure OpenAI Service のファイアウオールでインターネットからの操作を拒否していたとしても、Azure Resource Manager 経由での操作は拒否されませんでした。Azure Resource Manager 経由での操作に対しては、RBAC を利用して操作できるアカウントを制限する、Azure AD の条件付きアクセスを利用して操作できる IP アドレスや端末を制限するなど、別の対応が必要になります。ただしこの対応は Azure OpenAI Service の利用に限った話ではなく、Azure のサービスを利用する際に必要になる一般的な対応です。

まとめ

Azure OpenAI Service を Private Endpoint 経由で利用してみました。利用する方法や操作する内容によって、Azure OpenAI Service の Private Endpoint を経由するものと経由しないものがある点に注意です。

Note

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