新しい Azure Stack HCI のざっくりまとめ

azure
Published: 2020-08-01

08/01 ゲスト OS のライセンスを更新

Inspire 2019 で新しい Azure Stack HCI が発表されました。セッション動画や公式ドキュメントをもとに何が変わったのかを振り返ります。

なお、本エントリ内のキャプチャは次のセッション動画からの引用です。

Modernize datacenters with Azure Stack HCI

ざっくりまとめ

従来の Azure Stack HCI は認定されたハードウェアと推奨構成の Windows Server 2019を使って HCI を実現したものです。Azure Stack という冠が付いてはいたものの、次のような実情を踏まえると Azure Stack HCI はオンプレミス Windows Server の延長でした。

  • ホスト OS は Windows Server 2019 である
  • ホスト OS のライセンス体系は従来の Windows Server のライセンスモデルである
  • ホスト OS は Azure と連携しない

新しい Azure Stack HCI は Azure のサービスとして生まれ変わりました。従来の Azure Stack HCI からの主な変更点は次の通りです。

  • ホスト OS が、普通の Windows Server 2019 から Azure Stack HCI のホスト OS 用にカスタマイズされた Azure Stack HCI OS になった
  • Azure Stack HCI OS のライセンスが、物理コアベースの月額課金になった。この料金は Azure サブスクリプションの利用料金として請求される
  • 料金を計算する観点から、HCI クラスタを Azure に登録することが必須となった
  • Azure ポータルでクラスタを確認できるようになった
  • Azure サポート契約の対象となった

今回の変更によって Azure Stack HCI の Azure 色はとても濃くなりました。立派な Azure Stack ファミリーの一員になったといってよいでしょう。

Azure Stack HCI OS

Azure Stack HCI OS

Azure Stack HCI OS は、仮想化ホストとしての機能に最適化された OS です。仮想化ホストとして動かすことを前提としているため、ゲスト OS としては利用できません。また、Hyper-V と S2D、SDN の役割だけを有しているため、Windows Server のように何から何まで役割や権限をインストールできません

参考:When to use Azure Stack HCI

課金体系

Azure Stack HCI OS の利用料金は、Azure Stack HCI OS が動作しているサーバの物理コア数に応じた月額課金です。その料金は Azure サブスクリプションの利用料金として請求されます。買い切りの永久ライセンスはありません。

Azure Stack HCI billing is based on a monthly subscription fee per physical processor core, not a perpetual license. When customers connect to Azure, the number of cores used is automatically uploaded and assessed for billing purposes.

Licensing, billing, and pricing

1コア当たりの月額料金は$10のようです。

サーバのモデルに応じたライセンス料金

ただし、この利用料金の中にゲスト OS として Windows Server を実行する権利は含まれていません。ゲスト OS で Windows Server を実行したい場合は、Windows Server のライセンスを別途用意する必要があります。

参考:https://github.com/MicrosoftDocs/azure-stack-docs/issues/918#issuecomment-663314001

Azure への登録

新しい Azure Stack HCI は課金のためにクラスタを Azure に登録する必要があります。登録には Az.StackHCI モジュールの Register-AzStackHCI コマンドを利用します。

Azure Resource Manager との連携

そして料金の計算に必要な物理コア数を Azure にアップロードするために、最低でも30日に一回、クラスタを構成する各ノードがインターネット上の特定の FQDN にアクセスする必要があります。したがって、新しい Azure Stack HCI は Disconnected なシナリオでは利用できません。

An internet connection for each server in the cluster that can connect via HTTPS outbound traffic to the following endpoint at least every 30 days: *-azurestackhci-usage.azurewebsites.net

What you need for Azure Stack HCI

クラスタを Azure に登録すると、クラスタは Azure Stack HCI リソースプロバイダの管理化におかれて、ARM な ID が付与されます。私が作った クラスタには 次のような ID が付与されました。

/subscriptions/xxxxxxxxx-xxxx-xxxx-xxxx-c5bd3103e127/resourceGroups/azshci-registration/providers/Microsoft.AzureStackHCI/clusters/azshciclus

Azure でできること

クラスタを Azure に登録すると、登録したクラスタの状態を Azure ポータルから確認できるようになります。残念なことに、私がアクセスしている Azure ポータルにはこの機能がまだ展開されていませんでした・・・

Azure Portal で クラスタを見る画面

さらに 他の Azure リソースと同じように Azure ポータルからサポートリクエストを作成できます。月額29ドルの Developer サポートから問い合わせを上げられるのは、中小企業にとってメリットがあると思います。

新しいサポート方式

今後は次のような機能の拡張が予定されています。

  1. メトリクスの閲覧と通知
  2. Azure Stack HCI リソースプロバイダの対応リージョンの拡張
  3. Azure ポータルを使って Azure Stack HCI 上に仮想マシンを作る機能

3に超期待です。この機能を利用すれば、利用者にホスト OS へのアクセス権を渡さなくても、利用者自身が仮想マシンを作れるようになります。とても簡単にセルフサービスを実現できます。しかも Azure のコマンドラインツールにも対応するようなので自動化も簡単です。

セルフサービスで仮想マシンを作る

拡張セキュリティ更新プログラム

Azure Stack HCI 上で動く Windows Server 2008/R2 は追加の費用なしで 拡張セキュリティ更新プログラム を受けられます。Azure Stack Hub と同じですね。これも Windows Server ではなく Azure のサービスになった結果でしょう。

Are extended security updates (ESUs) available if I move my Windows Server 2008/R2 to this new HCI solution?

Yes, you’ll get ESUs at no cost when you migrate your Windows Server 2008/R2 workloads to Azure Stack HCI.

Frequently asked questions about Azure Stack HCI